私は、ハラリ氏の三つの著作を読み、その壮大な構想で人類や地球の過去・現在・未来を洞察する英知に心酔している。
その彼が、今の新型コロナウイルスによる危機を私達の世代で最大の危機と言い切り、そしてこの嵐の過ぎ去った後には全く違う世界が拓けていると喝破した。
その指針には重要な視点がある。
それを簡潔に記載する筆力の無い私はポイントを羅列するしか無いが、自らが繰り返し反芻する為にまとめてみた。
『著書「サピエンス全史」で人類の発展の歴史をひもといたイスラエルの歴史学者、ユヴァル・ハラリ氏が日本経済新聞に寄稿し、新型コロナウイルスの脅威に直面する世界に今後の指針を示した。』
『人類はいま、世界的な危機に直面している。おそらく私たちの世代で最大の危機だ。
(中略)
私たちは速やかに断固たる行動をとらなくてはならない。選択を下す際には、目の前の脅威をどう乗り越えるかだけでなく、この嵐が去ればどんな世界に住むことになるかも自問すべきだ。新型コロナの嵐はやがて去り、人類は存続し、私たちの大部分もなお生きているだろう。だが、私たちはこれまでとは違う世界に暮らすことになる。
(中略)
何もしないリスクの方が高いため、未熟で危険さえ伴う技術の利用を迫られる。多くの国で、国全体が大規模な社会実験のモルモットになるということだ。
(中略)
今回の危機で、私たちは特に重要な2つの選択に直面している。1つは「全体主義的な監視」と「市民の権限強化」のどちらを選ぶのか。もう1つは「国家主義的な孤立」と「世界の結束」のいずれを選ぶのか、だ。
(中略)
1つは政府が市民を監視し、ルールを破った人を罰する方法だ。今、人類史上で初めてテクノロジーを使えば全ての人を常に監視することが可能になった。
(中略)
これまでは大量の監視ツールの配備を拒んできた国でも、こうした技術の活用が常態化するかもしれないだけでなく、監視対象が「皮膚の上」から「皮下」へと一気に進むきっかけにもなるからだ。
(中略)
これにはマイナス面がある。ゾッとするような新しい監視システムが正当化されるということだ。
(中略)
企業や政府が私たちの生体データを一斉に収集し始めれば、彼らは私たち自身よりもはるかにしっかりと私たちのことを理解できるようになり、感情を予測するだけでなく、感情を操作したり、私たちに商品や特定の政治家など何でも売り込むことが可能になるだろう。
(中略)
緊急事態の一時的な措置として生体監視が有用だという意見には一理ある。緊急事態が終われば、そうした措置は廃止すればよい。だが、残念ながらそうした一時的な措置は、新たな緊急事態の芽が常に潜んでいるため、緊急事態が終わっても続きがちだ。
(中略)
全体主義的な監視態勢を敷くのではなく、むしろ市民に力を与えることで、私たちは自分の健康を守り、新型コロナの感染拡大を阻止することを選択できる。
(中略)
市民に科学的な根拠や事実を伝え、市民がこうした事実を伝える当局を信頼していれば、政府が徹底した監視体制など築かずとも正しい行動をとれる。市民に十分な情報と知識を提供し、自分で可能な限り対応するという意識を持ってもらう方が、監視するだけで、脅威について何も知らせないより、はるかに強力で効果ある対応を期待できる。
(中略)
ただし、そのようなレベルの指示順守と協力を達成するには信頼が必要だ。人々の科学への信頼、行政への信頼、そしてメディアへの信頼が必要だ。
(中略)
筆者は自分の体温や血圧を測定することには大賛成だ。だが、そのデータが絶対的な権力を持つ政府を生み出すために利用されてはならない。むしろ、私のような個人が自分の健康状態に対する理解を深め、自分で適切に判断を下せるよう活用されるべきだし、同時に政府に説明責任を果たしてもらえるように市民が活用できるようにすべきだ。
(中略)
今回の感染拡大では、市民のあり方が大いに問われているということだ。これからは私たち一人ひとりが、根拠のない陰謀論や自分の利益のことしか考えていない政治家ではなく、科学的なデータや医療関係の専門家たちを信頼しなければならない。選択を誤れば、自分たちの健康を守る唯一の道は「これしかない」という思い込みで、私たちにとって最も大切である自由を手放す事態になりかねない。
(中略)
私たちが直面する第2の重要な選択は、「国家主義的な孤立」と「グローバルな結束」のいずれを選ぶかだ。感染拡大もそれに伴う経済危機もグローバルな問題だ。これを効果的に解決していくには、国を越えた協力以外に道はない。
(中略)
まず何よりもウイルスに打ち勝つには、世界中で情報を共有する必要がある。これができれば、人間はウイルスよりはるかに有利になる。
(中略)
各国が自国で各種の医療機器などを生産して抱え込むのではなく、世界全体で協力しあって取り組めば生産を加速し、命を救う機器をもっと公平に分配できる。戦争中はどこの政府も重要産業を国営化するように、このウイルスに対する戦いで死活的に重要な生産ラインは「全人類のものとすること」が必要だ。
(中略)
もう一つ必要なのは、移動に関するグローバルな合意だ。数カ月にわたる海外への渡航禁止は、様々な深刻な問題を招き、ウイルスとの戦いの妨げになる。少なくとも科学者や医師、ジャーナリスト、政治家、ビジネス関係者など重要な職務に就く一部の人には渡航を認めるよう各国で協力すべきだ。』
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