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'20/5/18 コロナに勝つ為に正しい知識を

新型コロナウイルスの感染が拡大し、人々が不安に陥り、社会が混乱している。

デマが飛び交いそれを助長している。

こういう時に正しい知識で事態を把握し落ち着いた対処をとることが大切だと考える。

その一助となる情報を得たのでお知らせしたい。

文芸春秋6月号 『最後は「集団免疫」しかない』 奥村康(順天堂大学医学部免疫学特任教授・アトピー疾患研究センター長)からの抜粋

1. 免疫とは、人間の体に備わっている抵抗力のこと。一度でも体内への外敵の侵入を経験すると、人間の体はその敵を記憶し、次に攻撃を仕掛けてきたときにはその敵を排除し、健康を守ろうとします。これが免疫機構です。

2. 新型コロナウィルスは、人類が初めて接する外敵です。最初は人間側にウィルスの情報がないので攻撃にさらされてしまいますが、これをどうにか克服できれば、次からは免疫が体を守ってくれます。 そして、人口のうち一定割合の人がこの免疫を身に付ければ、ウィルスは感染を拡大することができなくなり、自然に収束に向かうことになります。これが「集団免疫」です。 ウィルスに感染した人全てが重症化するわけではありません。発症しても軽傷で済む人や、感染しても症状が出ない人も大勢います。ただ、たとえ軽症や無症状でも、感染した人の体には免疫ができます。 今猛威をふるっている新型コロナウィルスも、最終的には集団免疫によって押さえ込まれるでしょう。と言うより、それ以外に人間が勝利する道は無いのです。

3. 乱暴を承知の上で極論を言うと、早く収束させたいのであれば、隔離政策などせずに世界中の人たちが普段通りの生活を送り、多くの人が感染を経験する手もある。そうすれば集団免疫が早く獲得できて、ウィルスの勢いを封じ込めることができます。もっとも、そうなると短期間に患者が集中し、医療機関がパンクしてしまいます。その分、犠牲者も増えてしまう危険性があります。

4. 人体の免疫は、大きく「自然免疫」と「獲得免疫」に分けられます。この2つをわかりやすく表現すると、自然免疫は警察官、獲得免疫は軍隊のようなイメージです。 自然免疫は最前線を常にパトロールし、ウィルスなどの外敵が侵入してきたらすぐに潰していく役割を担っています。代表的なのがリンパ球の1種であるナチュラルキラー細胞(NK細胞)や、白血球の1種である好中球やマクロファージなど。 自然免疫が外敵と戦っている段階では、特に症状はありません。そして自然免疫が勝利すれば、人間は外敵が自分の体に侵入してきた事実にすら気づくこともないのです。 ところが、自然免疫、特にNK細胞は、いろいろな要因で戦力ダウンすることがあります。その結果、自然免疫だけでは勝ち目がなくなったとき、今度は獲得免疫が出撃していくのです。 獲得免疫は軍隊なので、攻撃も大掛かりです。そのため、この戦いが始まると人間も気づくことになる、つまり症状が出るのです。 主な症状は「発熱」です。熱が出ると言う事は、獲得免疫が働いていること、言い換えれば、免疫が本気で外敵と戦っていることを示しているのです。

5. 最初に戦う自然免疫は、加齢とともに弱体化します。70歳を過ぎると防御・戦闘能力が低下していくのです。 その点、獲得免疫は年齢の影響は小さい。計算上では200歳まで生きても若い頃と変わらない強力な防衛力を維持すると言われています。

6. 免疫には戦う相手によって得意不得意があります。免疫はがん細胞や細菌のような「サイズの大きな敵」は苦手です。しかし現代の人間は「抗生物質」と言う兵器を持っているので、たとえ細菌に感染したとしても、対抗することはできますが。 一方、免疫は「小さな相手」には俄然力を発揮します。中でもウィルスの退治は得意です。

7. その意味でワクチンは、「戦いの準備」のようなものと言えるでしょう。事前にワクチンを接種することで免疫に軍事訓練をさせておき、本物のウィルスが来たときには「待ってました」とばかりに総攻撃をかけられるように準備しておくのです。

8. 人間は、生まれた時は免疫を持っていません。最初は母親から受け継いだ抗体が赤ちゃんの体を守っているのです。生後3ヶ月ほどでようやく自前の免疫を持ち始めます。とは言え赤ちゃんの免疫は敵と戦ったことがありません。そこに容赦なくいろいろなウィルスが侵入してくるので、赤ちゃんの免疫は連戦を強いられます。常に戦闘状態が続くので、赤ちゃんはよく熱を出します。発熱は、免疫が身の回りのウィルスを相手に軍事訓練をしているようなもの。訓練を繰り返すことで免疫が蓄積され、強い防衛力ができていくのです。

9. これまでの研究で、新型コロナウィルスにはアミノ酸の構造の違いから「L型」と「S型」の2種類があることが明らかになっています。L型は悪性度が高く、イタリア、スペイン、アメリカで流行っているのはこのタイプ。一方のS型はL型よりは強力ではない。日本で多く見られるのはこのS型と考えられます。 実は、比較的弱いS型に感染しても、体内にできる免疫はL型のウィルスにも通用すると考えられます。 もちろんS型でも一定の割合で重症例は出るし、ローレスポンダー(低反応性。遺伝子情報により、その人の免疫が苦手となる対象が決まる)など何割かの人は命を落とすことになるので、積極的にS型を流行させて免疫獲得を推し進める事は現実的ではありません。 10. 自然免疫の1つであるNK細胞はいくつかの要因で戦力が落ちる、と述べました。その要因は大きく3つ挙げられます。 ①不規則な生活 ②激しい運動 ③精神的ストレス 11. ウィルスは我々人類が現れるよりも遥か以前から地球上に存在していました。後から出てきた人類に対して、たまたま病原性があった、と言うだけのこと。つまり人間は、ウイルスの住む星に後から生まれ、ウィルスに囲まれて生活し、免疫機構も進化してきたのです。 であるならば、やはり私たち自身の免疫こそ、頼りになる最後の砦なのです。(以上)